![]()
作陽高校サッカー部凱旋パレード「やれやれ、今日は大変じゃった」
「作陽サッカーの準優勝パレードですね」
「そう。とりあえず出勤はして、11時前に抜け出す計画だった」
「今朝そう言ってました」
「右が監督さんの挨拶」
「この写真が撮れたということは、無事抜け出したということですね」
「それが無事でもなかった」
「どういうことです」
「それが、出勤して間もなく、部長がわしを呼んで『お前、作陽のパレードに行くつもりだな』と言う」
「え……どうしてばれたんです」
「まさかブログを読んでいる訳はないし……『どうしてそんなことを言うんですか』って尋ねると、『だって、サッカーのネクタイをしているじゃないか』って……」
「それじゃあばれますよ」
「すごい洞察力の部長じゃ」
「別にすごくないと思います」
「右上の写真はセレモニーで監督さんの挨拶」
「監督さんて、お名前は」
「さあ……あるのかなあ……それから左は紙吹雪舞う商店街」
「ところで、部長にはどう言い訳したんです」
「『部長には黙っていてください』ってお願いしたが……」
「相手が部長でしょ」
「そうなのじゃ。だから意味がなかった」
「相変わらずですね」
「それで『どうやって抜け出すつもりだ』って聴くから『パソコンの調子が悪いからネットワークの状況を見てきます』と言って抜け出すという計画を話すと、『それじゃあ1時間も抜け出せないだろう』と言う」
「……確かにそうですね」
「それで『どうしましょう』って言ったら、部長の方からの提案が出た。まず給湯室にあるタイマーをこっそり持ち出して、電気室に仕掛けると、11時前に一部の電気が止まるから、わしと部長が直しに行く」
「はあ」
「そこで今度はタイマーで自動的にオンになるようにして、12時頃に復旧させる」
「はい」
「これで、2人が電気を直していたとみんなは思う。まさか部長もグルとは思わない訳じゃ」
「ひどいね」
「かくて無事抜け出しに成功……」
「後で問題になりますよ」
「右の写真はパレードの先頭を歩くチアガール。本番の試合よりも、今日の演技の方が上手になっていた」
「そうですか」
「後で聴いたが、この大会のために急遽結成されたそうで、試合を重ねてどんどんうまくなったのじゃな」
「なるほどね……それにしても、部長さんはどうして大家さんの悪事に荷担したんでしょう」
「部長からは条件が出た」
「どんな条件です」
「わしがサッカー部の子供と顔見知りになっているから、得点王の小室君と一緒に写真を撮らせろというのじゃ」
「そんな条件で」
「実は小室君とは面識がないが、他の子から頼んでもらえば何とかなるだろう」
「もしならなかったら」
「……人込みに紛れて逃げてしまえばいい」
「本当に無計画だね」
「まあ、そんな訳で左の写真は優秀選手に選ばれた5人」
「よくこんな写真を撮りましたね」
「報道陣に交じって、学校に潜入してしまった」
「ひどい」
「世間には内緒じゃぞ」
「……ここで公開したら、ばれちゃいますよ」
「あ、そうか……まあ、そういう訳で、無事部長も写真が撮れた」
「部長さんも好きですね」
「いや、娘さんがテレビで見てファンになったらしい。娘に写真を見せて自慢する積もりなのじゃ」
「部長さんも大変ですね」
「昨年gooで好感度調査をやっていたが、要するに娘さんのファンと一緒に写真を撮ることで、自分の好感度も上げるという、卑屈な手段なのじゃ」
「いいんですか、そんなこと言って」
「部長はパソコン音痴じゃから」
「じゃあ、いいか」
「そういう訳で、無事会社に戻ったが……」
「何かありましたか」
「12時で戻る予定が、30分以上も延長ということになったので、部署の人達が疑惑を抱いていた」
「なるほど……どうしました」
「部長が、電源は12時に直ったが念のために検査した、と説明したのでみんなが納得した」
「それなら大丈夫ですね」
「ただ、一つ不安が……」
「何です」
「部長と得点王の小室君を写真で撮ってあげたのじゃが……」
「何かありました」
「ちょっとした悪戯心を出して、首から下しか写さなかった」
「……部長さんのはデジカメですか」
「いや、今時珍しいフィルムの使い捨てカメラじゃ」
「現像して驚くでしょうね」
「ううん……まだ10枚くらい残っていたから……ケチな部長だから、残りを全部撮らないと現像に出さないと思う……しばらくばれないと思うのじゃが」
「知りません!」
「さて、どうなりますやら……いずれご報告……するかなあ……」
「ところで、最後の写真は……」
「パレードの終わった後、掃除をしている部員じゃ」
「偉いですね」
「写真で学校周辺を掃除しているのがサッカー部員。レギュラーで出場した子供達で、優秀選手に選ばれた子もちゃんとやっている。他の場所は生徒会の人や野球部の人が掃除をしていた。そういえば国立でも、応援の後まず掃除をしていたな。学校関係者ではない人達が入っていた場所でも、自分達の応援をしてくれたのでって、生徒達がゴミをちゃんと集めていた」
「好感度が高いですね」
「今日もキャプテンの石崎君がお礼の言葉を述べていたが、おごることなく皆さんの応援のお陰でという言葉を繰り返していた。謙虚さが好感度を上げているのじゃろう」
「はい」
「作陽サッカー部のご報告はこれまで」